当ホテルの客室には、阿久根が産んだ日本画家、丹宗律光の複製が展示されています。
その美の潤いをお楽しみください。
◆後記◆
本巻に集めたるは概ね郷里鹿児島縣阿久根町の地域に於て、之れを採集又は入手或は培養して寫生せし事を備忘のために記す。(『丹宗律光画集 花鳥 第九巻』奥付より)
『丹宗律光画集 花鳥 第六巻』「序」より
路傍に咲く名も知らぬ花のつゝましさ に心ひかれて行きずりに佇むもあり、 野趣を摘みて投入の挿花として室内に飾り賞でる人、見向くこともなく行過ぎる人、 それは皆人々の勝手であって見る人の心のま ゝにまかせておいてかまはぬことであるが、人の心がなぜこんなにけじめが出来るのか。
我々は花を愛しやう、そして花のなかにも美を求めやう。高尚な趣味は教養から生れて人の心を豊かにする。我等が美の世界に住むことが多ければ多いだけ美的教養が髙ければ高いほど趣味は髙尚となり自ら人の品格を髙める。
花の名を知ることも無駄ではない、花の生態、花の
歩み疲れた遠足の一隊に唱歌の一節が如何にひゞくや、重荷を負ふ馬の耳にさへ美しく流れるであらう馬子唄の慰安。
近代文明は人生を機械的にし近代人を神過敏にした。永く續いた世界的戰争によって祖国の平和郷は破壊され敗戰日本のみじめさは極度に荒んだ。我々は敗戰日本の虚脱感からはやく立上らねばならない。そして理想の巨歩を踏まねばならない。
自然は自然のまゝに美しい。悠久の天地に育まれて路傍山原に咲く野草の花の姿にも心ひかる ゝ 人の一人でも多いことを念じてやまない。
※旧漢字と当用漢字がが入り混じっていますが、原文のママにしています。